この映画には、実に多くの問題が提出されている。まず、農家の嫁取りの問題だ。いまの農家に嫁にいこうという人がいないという現状と、その解決に外国の、特にフィリピン女性を連れてきて結婚させる、というのがある。それも、それを公的にやるのだから、それだけ重大な問題になっているのだろう。普通の結婚でさえも上手く行かないことも多いのだから、まして生活、習慣の違う人との結婚で、働き手にもならなくちゃいけなかったり、とにかくはるばる日本にやってきた人にとってなみなみならぬ苦労があるだろう。で、逃げ出す。国に帰ろうにも金が無い。フェイは東京にいる友人を訪ねる。ここで出会うのが変な人で、話がややこしくなる。この二人のことは別のところに置いとく。そうしないと、話がごちゃごちゃになってしまうからだ。彼らはフェイにとってなくてはならない人になるが、かといって、二人の変な関係にのめり込むには余裕がなさ過ぎる。というように話を単純にしてしまうと、妻に逃げられた夫が捜しに捜して、フィリピンにまで追ってくる。この感動的であるラストシ−ンが何かすっきりしない理由が、私なりに分かってくる。あれほど嫌だったところから逃げ出したのに、なぜ彼がやってきたのを見て涙を流したのだろう。それは、彼女の中で何かが変わったからだろう。その何かがあの二人だというのはすぐに分かるのだが、あの事件が彼女を岩手に帰らせるものになろうとは、私には理解できない。