愛人 ラマン(L'Amant)1992
監督 ジャン・ジャック・アノー
出演 ジェーン・マーチ、レオン・カーフェイ、フレデリック・マイニンガー

               

 自由といっても、一体何から自由であるかが問題である。金を多く持っているから良いとばかりは言えない。この金持ちの中国人がフランス人の少女を自由に出来るかのようにみえて、二人が一体何によって繋がっているのかと考えると、金かな、と思う。金が無ければ、この男はただの異国人で、特別に魅力的と言うわけでもない。だったら、金を抜きにして、付き合えばいいじゃないかと思う。ところが、彼は、金を捨てることが出来ない。つまり、金から自由になれない。
 誰もが、自分の持つ環境を大きく変えたりするのは苦手だ。自分が自分でなくなるような気がするからだ。出会いとか、恋愛とか言っても、その実は、化学変化のようなもので、人間の仮面を被っているから、大層な精神構造の働きのように思えるかも知れないが、ほとんど成り行きでものごとは運ばれて行くものじゃないか。低気圧に風が吹き込むようなものだと思う。愛に飢えた者たちは引力のようにくっつきやすく、金は金を呼び、羽を生やして飛んで行く。この映画をこのように即物的に見てしまった訳は、二人が即物的な行動をとったからだと思う。
 この映画がヨーロッパでヒットした訳は分かる。この恋愛関係が興味深いからだろう。ちょうど逆の立場の映画を考えてみれば分かる。その程度のことだろうと思う。そんなに大層な話でもないと思うからだ。


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