赤ちゃん泥棒（Rasing Arizona）1987

監督　ジョエル・コーエン 出演　ニコラス・ケイジ、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン、ウィリアム・フォーサイス、フランセス・マクドーマンド

　結婚して、なかなか子供が出来ない夫婦が、赤ちゃんを盗もうということになり、誰の子がいいかと選ぶんだけど、一人っ子は可愛そうだから、たくさん兄弟のいる子なら一人位いなくなっても構わないのじゃないか、と考えるのがまずおかしかった。親にしてみれば、どんな子供も同じように可愛いものだし、いっぱいいるからといって、一人くらいいなくても平気なわけがない。このへんの理屈はいうまでもがな、のことであるのだけれど、このちょっとおかしな夫婦の勢いを見ていると、彼らの考えに同調してしまうから、不思議だ。
　そもそもこの男と女の出会いからして、おかしい。けちな泥棒と、警官が結婚するわけだから、でもそんな彼らでも自分たちの幸福を追い求める権利は当然あるわけで、それに文句はないのだけれど、全てが自分の都合の良いように物事が運ぶものと思っていることに異議を申し立てたい。彼らはとんでもない犯罪を犯したわけで、誰かが思い切り二人に思い知らせなくっちゃいけないと思う。とはいえ、映画の作者は心やさしい人のようで、彼らを断罪していない。むしろ盗まれた赤ん坊の親のように彼らを許している。それもまた親の心を知るものの為せるわざなのかも知れない。