アメリカン・プレジデント(The American President)1995
監督 ロブ・ライナー
出演 マイケル・ダグラス、アネット・ベニング、マーティン・シーン、マイケル・J・フォックス、

 大統領がどんなに偉いか知らないが、尊敬される対象のようだ。同時にスキャンダラスな対象でもある。なにしろ、アメリカでは一番の有名人であるから、そうなるのだろう。4年に一度選挙で試されるわけだが、そうでない年はほとんど、結局はそのための選挙運動をやっているようなものだ。それ程、現職は有利なのに、勝つとは限らないから面白い。一番目立つから、良いことも悪いことも強調されるのだろう。
 さて映画であるが、大統領を扱ったものとしては「デーブ」があった。あれは、大統領の影武者が、大統領の急死を受けて、急遽かわりを勤め、立派にその職を果たす、という話だった。本当の大統領がやりたくても出来ないことをやってのけるところに小気味の良さがあった。いわば寓話だから、楽しめた。この映画はどうか、というとあれとは違って、まともに取り上げているので、遊びがない、これが第一の欠点。次に、オーソドックスな作り過ぎて、アメリカ人の大統領観を代表するような大統領が出てくる。いわば、理想的な大統領がここにはあるわけで、と言うことは、実際にはいないから、と言うことなのか。クリントンにしても、見かけはいいかも知れないが、やっていることは今までの大統領とあまり変わらない。というより、志は高くても、ただ一人孤高の人にはなれないのが、大統領の職とでも言うのだろうか。いや、大統領に限らず、おしなべて政治家というもの、初めの気持ちを保つことが出来なくなってしまうのが決まりなのか。悪貨は良貨を駆逐する、のたとえが当てはまるのか。でも、それじゃ誰が政治家になっても同じことになってしまう。実際はそれに近い状況であるのが悲しい。人の死が同情を買って選挙を有利にするということはよくある話だ。この大統領がそうだった。だが、4年経った今、その神通力は通用しない。それどころか、今や新たなスキャンダルに巻き込まれつつある。スキャンダルと呼ぶほどのものではないか、とするとこの事件はただの恋物語か。現職の大統領の恋愛は、なにかと政治の道具に使われやすい、特に政敵にとっては。格好のスキャンダルとして。それに負けそうになるのだが、うっちゃり、というか逆転ホームランというか、わりと気持ちのいいラストに続くのだが、その点が最も本物らしくなくなるところだ。つまり「デーブ」ならありそうなことだが、この映画ではありそうでないことが、起こってしまうからだ。見事な結末だが、とって付けたような結末でもあった。

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