アメリカの独立後すぐに近い話は珍しい。アメリカの独立宣言は立派なものだが、その後がいけない。奴隷をアフリカ大陸から連れてくることは、アメリカ大陸全体でやっていたようだが、こんなことが悪いことという認識なしで行われていたことに怒りを覚える。それを無知というのだろうか、いや、無知ではなく、確信あっての制度だった。人間が人間を奴隷にするということがまかり通ること自体が私には理解できない。奴隷といえば、たとえば「ベンハー」や「クレオパトラ」の時代のもので、現代に近い時代にまで存在していたことが不思議に思う。今、アメリカやヨーロッパの人がえらそうなことを言っても、にわかに信用しがたいのは、そんな過去があるからだ。
　一般的な風潮が奴隷制度を認める時代にあって、それに異議を申し立てたり、反対運動をすることには、相当な勇気がいっただろう。それはただ奴隷制度だけに限らない。現状を否定することが、自分の存在を否定することにつながる時、人は抵抗する。だが、それも実は誤解であることが多いのだが、大きな変革は見たくない。そう、今の時点で考えてみよう。なんだろう、環境問題か。地球を守ろう、とかさんざん言われているが、実際問題でいえば、もっともっと後戻りしなければならないはず。だが、今さら江戸時代に戻れるわけはない。ということは、よほど困らない限り、せっぱつまらない限り、手を打たないのだろう。石油があと数十年で枯渇してしまう、ということは分かっているのに、少しだけ控えて、忘れている。人口問題もそうだ。今でも全人類をまかなう食料は確保されていないのに、まだまだ人口は増え続ける。明日は明日のこと、今日が良ければいい。たまったゴミはためておこう、か。
　この問題をスピルバーグが取り上げたと聞いて、どんな映画になっているのか楽しみだった。感動的な話にはなっていない。奴隷に対する裁判を通じて、白人に反省を迫っている。また、どの白人も奴隷を良いものとは考えていなかったこと、黒人たちを尊敬さえしていたこと、を見せてくれる。だが、厳しく言えば、それはわざわざ教えられなくても、想像出来ることだ。白人の全体が全て悪であったはずもなく、一色であるはずもない。これは、私が期待しすぎたから、すこし物足りなく思ったのかもしれない。