嵐が丘（Wuthering Heights）1992

監督　ピーター・コズミンスキー　 出演　ジュリエット・ビノシュ、レイフ・ファインズ、サイモン・シェパード、ソフィー・ウォード、シンニード・オコナー

　なんともどろどろした復讐劇だ。そもそもヒースクリフが連れられてきたのも彼自身の責任ではないのだから、むりやりあんな立場に追い遣られた不幸は、あの主人の責任だ。だから、彼が死んでしまったら手の平を返したように馬小屋に寝泊まりさせられて、召し使いとしていいように使われる身になってしまった。ある程度いい目も見た後だから、余計その落差は大きいものだったろう。いわば、気まぐれに取り立てられ、遊ばれたようなもの。一個の人間として扱ってくれなかったという思いが彼ヒースクリフの胸の奥深くに消すことの出来ない傷として残った。彼の執念の深さは並大抵のものではない。キャシーとの愛情も歪んだ形にしか成長しなかったし、彼が二年後、遺産により金持ちになって帰ってきて、あの丘や屋敷を自分のものにした後も、勝ち誇ったように元主人のところから去ろうとはしなかった。金で手に入れられるものは全て手に入れたのは、彼がかつて手にしかかったキャシーが永遠に去ったことに起因する。汚い手を使ってリントン家の財産を手に入れ、もう彼が復讐すべき人間の一人としていなくなった時、ヒースクリフは自分の拠って立つ場所がなくなってしまったことを知っただろう。それは悲しいことじゃないか。彼が求めたもの、それはキャシー一人。それにしては余りにも犠牲は大き過ぎた。