Light, Mind, Rythm, Beat, Soul, Dark, Spirit, Tenderness, Love, Hate, Birth
　
　海は中から見ないと海とは言わないかのようなこだわりのある撮り方をしているため、単調とは言わないまでも、いささか重苦しい、息苦しさを感じた。だが、その美しさは目を見張るもので、それは冒頭の場面から引き寄せられるような力強さと共に感じられた。私の持った不満というのは、海という千変万化する風景の全てとは言わないまでも、その内のいくつかは見せて欲しかった。上空から、水面から、水中から、海底から、朝、昼、夜、世界中の海にカメラを入れて撮ってきて欲しかった。きっと、そういう映像を見られるものだと思っていたものだから、ずいぶんあっさりとした出来だったので、ちょっとがっかり。それとも、私の方が欲張りをしていたかも知れない。物理的に言っても、それはとてつもなく大変な仕事になっただろうし、不可能に近いことかもしれない。だけど..........
　ないものねだりをしていても仕方がないので、生き物の宝庫、生物の発生した所、海に限りない愛情を持って、カメラを入れたこの映画は、本来水の中に住むことの出来ない人間がはるか過去、その中で生息していた祖先に先祖帰りすべく、自由に海を泳ぎ、写しとった映像はただの憧れを越えて、海に生きるがごとく、海中の生物の仲間になってしまっている。総数で言えば、きっと海の生物の方が地上の生物より多いだろうし、彼らの方がいわば「本家」なのだから、私たちが海の住民に尊敬の念を持って接しなくてはいけない。
　水中は、どんな音がするのだろう。実際の音を聞いてみたい、魚は音を発しているのか、波の音は海中ではどんなふうに聞こえるのだろう。この映画には見事に音楽が付けられているが、本当は現実音も聞きたかった。でもそれはそうロマンチックなものではないかも知れない。だから、効果的な音として、音楽を付けたというのだろう。今度は不足を感じるのではなく、不満に思った。過剰な音楽に辟易とした、とまではいわないが、みごとにはめられた音楽は自然さを壊していた。海を愛するあまり、その美しいところにしか、目が行かなくなったかのような映像が次々と現われてくる。彼の目指すところがここにあるのだから、違うものを求めるのは見当違いなわけで、ただ美しさに酔っていれば、目的は達したことになるようだ。