自国のことをことさら悪く描くつもりはなかったに違いない、となると、実際にあんな街角があるのだろう。表面上、美しい街ばかりという印象のある国、オーストラリアだから、住民まで美しく、うるわしく暮らしているだろう、というとんでもない（？）思い違いをしていた。ここまで書いて、アメリカ映画ではどうか、と考えてみるに、自分の国の恥も汚れも悪もきっちりと描いているじゃないか、ということに思い至った。つまり、たんなる私の思い入れが、この映画を少々ゆがませてしまったようだ。どこの国にもあるだろう普通の、でも少しだけがらの悪い町に住むことになったエイミーの家族。家族といっても二人きり。エイミーと母親だ。父親もいるような映像が出てくる。彼は歌手のようで、雨の中、ステージでギターをかかえて歌っている。
　エイミーがなぜ話さなくなったのか、声は出るはずなのに、まったくしゃべらなくなってしまったわけはなぜだろう。以前は歌うことが好きだった。父親の歌に合わせて一緒に歌ったものだった。それが近所の売れない歌手の声に合わせて歌うことを再開してから、歌うことだけはするようになった。結論から先に言うと、同意の映画「リトル・ボイス」とほとんど変わらない事件が原因で一人の少女が口を閉ざしてしまう。それはまったく納得できる原因であるのだけれど、こうもトラウマというやつが暴れまわることに嫌気がさすほどだ。実際のことでも、また映画の題材としても。これからこの手の話がきても、すぐに先が見えてしまうのではないかと思う。