いかにもフランスらしいしゃれた味わいの映画だ。エドワ−ルは新進のピアニストだ。妻のキャロリ−ヌが今夜着ていくドレスを体に当てている。エドワ−ルはピアノをさらっている。さて、今夜これから二人揃って行くところはキャロリ−ヌの叔父さんのところだ。エドワ−ルはどうやらこの叔父さんが苦手らしい。こんなことが次第に明らかになってくる。それが実に自然に描かれていて、過不足なく爽やかでさえある。この姿勢が最後まで貫かれていて、パーティーの主賓や他の人々の一人一人がまるでノーマン・ロックウェルの絵のようにあざやかに描き分けられている。
　このパーティーでピアノを弾き、出ている人の誰かが認めてくれれば、無名のピアニストであるエドワールが世に出るチャンスにもなれるというものらしい。それをアレンジしてくれたのが叔父さんで、それは有難迷惑でもあるが、付き合い上行かないわけにも行かない。そういう訳や、事情が絡み合って、その上、ドレスのことでふたりは喧嘩になってしまう。言ってみれば、痴話喧嘩で別れる、別れない、という話にまでなってしまう。
　割とたくさんの人の出てくる映画をこのように見事にあやつってしまうジャック・ベッケルの凄さもさることながら、キャロリーヌになったアンヌ・ブェルノンがいい。泣いたり、すねたりされたら、エドワールでなくたって、抱き締めてしまいたくなる。ダニエル・ジェランは音ほどではないにしても、ピアノは弾けるようだ。ショパンの柔らかさが、全てを柔軟にしてくれる。特にフランス風な音が心地よい。めでたしめでたし。