この映画の存在を知ってからエド・ウッドの存在を知った。なにやら不思議な映画を作った人だそうで、たしかユーロスペースで公開されていた。ティム・バートンが取り上げたからって、またはこの映画を見て本物も見たくも少しはなったにせよ、実際に見る気にはまったくならない。だって、どんなにつまらない映画であるかはこの映画によって証明されているのだもの、見る人の気が知れない。つまらない映画ほど退屈なものはない。それなら居眠りでもしていた方がどんなにいいか。それはさておき、ジョニー・デップがとてもいい。うまい。才能はないけれど、映画を愛する気持ちがたっぷりの監督を楽しそうに演じている。これは、本当は悲劇なのだけれど、当人にとっては一種の成功物語だから、エドが楽しそうなのは分かる。とにかくどうにかこうにか数本の映画を作ることが出来たのだから、御の字だ。映画の好きな人間で実際に映画を作った人が何人いることか、を考えてみれば、彼がたぐい希な「才能」の持ち主であったことが分かる。そう、エドは「映画をでっち上げること」に秀でていた、とでもいえばいいか。女装趣味も奥ゆかしいじゃないか。少なくともホモや変態ではないもの。むしろ、私なんかに近い存在のような気がする。つまり、映画好きで、出来たら映画をとってみたい、と思い、思いがけずやってきた機会をきちっと捕らえ、映画を作ってしまった男、そんな彼が幸せでないはずがない。後半生がアル中になってしまったらしいけど、数本の映画が絶頂と思えたからこそ、の堕落になってしまったのではないか。そんな気持ちだけの絶頂もないのが普通の人間だもの、彼は十分幸せだった、といえるのではないか。ねえ、そうとでも考えないと、かわいそうだもの。