アメリカ映画で感心することは、時代色の付け方の見事さだ。フィルムの色合いから、建物、車、人間、言葉などがきちんとその頃になっているのだ。この映画でいえば、1950年代がフィルム上に再現されている。これは案外というか、とても大事なことで、その上にドラマが作られていくと、話さえも真実らしく思われてくる。
　簡単に言うと、警察の腐敗を描いている、よくあるアメリカ映画なのだが、それを追求するのが一人ではなく、複数なのが目新しいところだ。組織の内部から犯罪を告発するのは難しいことだ。身内意識が働き、強権をもって事実を明らかにしようとすることが逆に犯罪と思われかねないからだ。だから、この映画でも発端になるのは、新入りの警官からだ。比較的簡単な事件がもみ消されそうになる。そこで正義感を発揮して、真相を究明しようとする。だが、この正義の戦いにも内部の視線は冷たい。それどころか、それをやめさせようとまでさせられる。ああ、どこに正義はあるのか。こういうのって、あんがいありそうだ。こうまでおおげさなことではなくても、身内をかばうことはありがちだ。でも、警察でこういうことがあってはならない。
　ここで、よくあるアメリカ映画だと、なぞの人物に追いかけられて、逃げ回るというパターンになるのだが、この映画は違う。彼が内部ですることに協力してくれる人物があらわれる。上司も手助けしてくれる。まあ、この上司というのがくせ者なのだが。あれやこれやあって、解決にはなるのだが、どうもそれでも、すっきりしない。ということは、まだまだ悪の温床でありつづける警察が残っているということなのだろう。50年代だから、差別用語は出るは、警察は強権を使うは、でひどいものだが、今でも表向きはともかく、内情は変わっていないように思う。