バートン・フィンク（Barton Fink）1991

監督　ジョエル・コーエン 出演　ジョン・タトゥーロ、ジョン・グッドマン、ジュディ・デイヴィス、マイケル・ラーナー、ジョン・マホーニー

　ニューヨークで成功していたのにもかかわらず、きっと金に目がくらんだのだろう、ハリウッドくんだりまでやってきて、プロレスに関する映画のシナリオを書かなければならないはめになる。ホテルの一室に閉じ込もって、タイプライターに向かうのだが、これがほとんど進まない。何とかイメージを膨らませようと、壁の写真を見たりするのだが、彼は器用な作家ではなさそうだ。シナリオを書くことに慣れてなかったし、まして注文通りに書くなんてことにも慣れていなかった。
　だったらとっとと帰れば良いものの、何とかなるんじゃないかと悪戦苦闘する。彼の寝起きするホテルの部屋というのが変な部屋で、隣の住人も奇怪な人物で、自分では保険の外交員とは言っているものの、本当かどうかは分からない。蒸し暑くって、扇風機を回しても、あまり効果がないようだ。それどころか、壁紙が剥がれ、糊が溶け、たらーりとしたたり落ちてくる始末。何度も貼ってはみるのだが、湿気のせいか又たらーり。
　私は正直な人間だから、こういった事態が本当に起こったことと考え、ずいぶんおかしなことの起こる部屋だなと思っていた。そしたら、あれは彼の幻想なんだって、皆なが言うものだから、そう言えばそうだなと納得したわけ。でも、白昼夢とかのせいにするとなんでもＯＫでかたづいちゃうでしょ、そういうのってつまんない。私みたいに素直に見れば、変なホテルで、恐ろしい隣人で、有名作家は飲んだくれで、殺人事件にまきこまれて、殺されかけて、なんて凄いことがかたまってやって来ないとは限らない。幻覚ということなら、どこが正常でどこからがそうなのか。「デリカテッセン」みたいな映画もあるからね、油断できない。