うーん、まずはじめに心配したことは、この映画、10年経ったら、どうなるか、ということだ。97年頃の風俗を切りとってはいるが、それが未来から見て陳腐なものになってしまいそうだからだ。変わらないものを描くのが映画の多くだとしたら、この映画が果たす役割は、映画でないテレビのドキュメンタリーのようなものの得意とすることだと思うからだ。一般的にいって、どんな映画でも時間のフィルターをかけてしまうと色褪せるものだが、これではもろに白黒になってしまいそうだ。
　さて、中身に入っていこう。渋谷は落ちついたところのないせわしい所だ。少なくとも私の知る限りではそうだ。つまり、この30年、悪くなりはしても、良くはなっていない。東京オリンピックの時に東京では大工事があって、相当変わったらしい。だから、その前なら少しはましな街だったかもしれない。だが、私は当時の東京の全貌を知らない。知っていたのはごく身近だけ。子供の生活範囲は狭いものだし、私があちこち行く子供だったら良かったのに、と今頃思っても仕方ない。しかも、カメラ小僧で街や人をパチパチしていたら、いい子いい子とほめてやるのになあ。　
　さて、田舎の少女が親と喧嘩して家を出て、ニューヨークに行くことにする。途中東京によって、金の補充をしようと考えた。どうするか。雑誌の情報を見る。東京で一かせぎするのに、必ずしも身体を使う必要はない、特に少女にとっては。身につけているものを売ることが出来るからだ。そんなものが金になるという不思議さ。そしてそれで金を得ることに躊躇するでもない少女がいることの不思議さ。でも、これが現代の常識なら、私は常識的になりたくない。
　この映画では、この田舎出の少女と、少女売春を取り仕切るしたたかな女性と、二人の中間の女性の一夜の話が展開する。たまたまニューヨーク行きを希望する女性と知り合った二人が彼女の資金を調達しようとする話で、いろいろあって、それは成功するのだが、最期に彼女を成田行きの電車に乗り込ませ、二人して満足の笑みを浮かべるところで終わる。二人と一人の努力がむくわれて、金を持ってニューヨーク行きのチケットが無駄にならなかったので、ほっとしたことはほっとした。ただ、それがこの映画への満足と同意義であるのではない。