パリのレストラン(Au petit Marguery)1995
監督 ローラン・ベネギ
出演 ステファーヌ・ロードラン、ミシェル・オーモン、ジャック・ガンブラン、アニエス・オバディア

シャルル・トレネのシャンソンがタイトルに流れる。映画の内容も又シャンソンのようだ。人が生まれて、いろんなことがあって、やがて死んで行くのは何もフランスだけの専売特許ではないのに、なぜか人生はどうの、恋はどうの、パリの空はどうのと、シャンソンは歌い上げる。フランスだからといって、昔ながらのシャンソンでもないだろう、と思うのに、でもやはりフランスにはこんなパリの片隅の話が似合う。裏返せば、パリにはロックは似合わない。ロックは英語だけだ。日本語もだめだ。
 この映画がフランスでヒットしたそうだ。ということは、こういった映画が今のフランス人が好きだ、ということだ。今年ので言えば「メランコリー」が似た主旨の映画だった。最近のフランス映画っぽくないと思うのだけど、やっぱりこんなのが好きなんだ。ベーシックな話だもの。取り立てて事件が起こるでもない、シェフの病気のため、店じまいをするレストランの話だもの、ここにはピストルも爆発も殺人も出てこない。でも、事件らしい事件のない方が普通でしょ、だから、普通の人たちの話なんだ。誰にも思い当たることのあるささいな出来事が集まって、年月が経ち、仕事も辞めなくてはならないことになる人もあり、そうでない人もいる。こんなことでいいの? と言ったって、これが真実に一番近い話なんだもの、文句の付けようがない。
 これは、昔の日本映画に当てはめれば、成瀬巳喜男かな。ディナーのフルコースもいいけれど、カフェにクロワッサンなら、毎日でも飽きない。それだよ、それ。これがそれ。ね。

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