美女と野獣（Beauty and the Beast）1991

監督　ゲイリー・トゥルースデイル、カーク・ワイズ 出演

　　　　　　　　　　　　　　

　予告編で見られる場面が非常に美しいものだったので、全編そうなのに違いないと、一人決めしていたものだから、その期待からすると、はずれ、になる。二人がダンスする場面でボールルームに入ってゆくと、その背景が素晴らしく綺麗、あそこにだまされたのです。あれはコンピューターグラフィックスで、目も彩に美しいわけだ。といって、全てをＣＧにするのは不可能。ＣＧは、ああいう背景のようなものは得意ではあっても、人や花を描くのは苦手なのだから。それに、いくらどんな絵でも描けるようになったとしても、ただのっぺりと綺麗なだけで、心がこもったものにはならないだろう。
　コクトーのは未見なので、比較することはできないが、きっと相当違うものだろう。なにしろ、これはディズニー印なのだ。彼亡き後にも、家族揃って見に行ける健康的な映画をという姿勢は変わらないものだから、物足りない印象もあるかもしれない。
　この映画が、アニメーションではなくて、実写であったら、どんなにかもっと素晴らしいものが出来たのではないか、と思ったりもするのだが、それは欲張りかも知れない。　「古典的」な歌が全編に流れ、思わずうっとりとさせられてしまう、この心地の良さは、古き良き時代のミュージカルを彷彿させるものだ。だから、アニメではなく、人間が実際に演じてほしい、などと思ってしまうのだろう。絵としては、ともかく一定の水準は確保されているのは分かり切ったこととして、音楽のすばらしさがこの作品を押し上げる力になっている。
　この物語には悪人は出てこない。のろいをかけられて、野獣に姿を変えられた王子にしても、ベルに言い寄るガストンにしても、憎めないキャラクターになっている。これはこの映画だから、そうなっているのか、または始めからそういう人たちなのかは知らない。　要約してしまえば、愛の力は強い、ということになるのかな。愛は人を変える、とも言えるし、愛は万能だ、何とでも言える。ただ、それだけで通すのは単純過ぎちゃって、引っ掛かりがないので、大人のお子様ランチというところかな。コクトーを無性に見たくなった。