この映画はずっと気になっていた。テレビで紹介されていたのを見て、監督がとにかく観客が楽しめるものを作ることを目指している、という話をしていたのに好感を持った。すべからく映画を作る人はこうでなくてはならないと思っていたので、興味を持った。それで、ぜひこの映画を見たいものだと思っていたのだが、残念ながら公開されたあとだった。前だったら、こういうのは文芸地下あたりでやるものと、安心していた。だから、半分あきらめていた。そしたら、うれしいじゃないか、中野でとりあげてくれた。これは見のがす手はない。
　まず、西田尚美がいい。この映画のために生まれたかのよう。子供の頃からお金に執着する性格、お金を銀行には預けずに、瓶にいれておくみたいな、かといって守銭奴でもない。とにかく現金を手に、ニコニコしていたい。それで銀行に就職。短絡的な考え方だ。いくら毎日現金を手にしたところで、自分のものでないものを数えるのはつまらないという単純なことに気付く。これは当たり前のことで、自分のでなかったら紙きれに過ぎない。なのに目の前には札束、というのは体に良くない。こんなことを思っている時に、なんと銀行強盗がやってきた。そして彼女が窓口にいたため、人質にとられてしまったのだ。そしてそして、いろいろあって一時ニュースの人となったりするが、人のうわさもなんとやらで、体も癒えて銀行に戻って、また同じ仕事にいやんなっていた。
　盗まれた金は5億円だったが、車ごと爆発し、燃えてしまったとこになっていた。だが、真実は彼女だけが知っていた。黄色のバッグは富士山麓の◯◯◯の沼の奥深く沈んでいるのだ。5億もの現金の行方を知るものは自分だけ。しかも燃えてなくなったことになっているのだから、お金は自分のものといってもいい。ただ、沼の場所がわからないのと、どうやって拾い上げるか、これが問題だ。
　彼女は持ち前のバイタリティで、バッグを見つけようとする。地理に詳しくなるために、大学に入り、測量の機器を買い込み、沼に潜るためにスキューバダイビングを習い、車の免許をとり、ひとつひとつ困難を解決していく。彼女のこの根性はどこから来ているのか。そう、金のためだ。金が彼女を動かしている。5億のためだったら、誰だってそうするだろうが、彼女は半端じゃない。何ごとも極めないと次に進まない。これくらい気持ちが入らないと5億円に手が届かないのかもしれない。これだけの努力をすれば、お金は十分に彼女のものだ。銀行の金は多分保険金でまかなわれているだろうから、あるべき場所に落ち着いたということだ。
　金金金、の映画だが、いやらしい印象ではない。むしろ、きっぱりと金に執着する気持ち良さが優先する。ものごとは右にしろ、左にしろ、明解な方がいい。この話は厳密に言うと犯罪に入るだろうが、強盗ではない。世の中では数万円とか数十万円の金で捕まる人がいるが、どうせ危険を犯すのなら、銀行か大会社の金庫から大金を盗むのがいい。
　この映画で良くないところは題名だけだ。