何か分からないものを、実在するもののように考えて、神秘的な存在としてしまうのは、私は苦手だ、と言うより、そんなふうな考え方自体を否定したい。だから、この世界のどこかに同じ自分がいるなんてことは有り得ないし、又そんな気もしたことがない。これが、二人が一卵性双生児で、生き別れていて、互いの存在を意識し合うというのだったら、有り得ないものでもない。芸術家のインスピレーションはそんな形にならない意識が表面ににじみ出たようなもの、それはその人だけに作用して、ほかの誰かにまでその影響を与えるものではないし、いわゆるテレパシーはないのじゃないか。何かを考えたことがたまたま出来事として起こって、起こったからこそ考えたことと一致させるのであって、起こらなかったら、考えたこともそのまま忘れてしまう。自分の都合の良いように持っていきたがるのは仕方のないことであって、でも科学的ではない。
　ふた女性が音楽に関わりを持っているのが共通している。そして、その歌う曲も同じものであることも偶然の一致でしかない。まあ、これは作り話なのだから、そういうふうに話を持っていくのは常套かもしれない。
　ポーランドのヴェロニカとフランスのヴェロニクが何らかの繋がりを見出すのはそのように話を作ったからであり、それ以外の明確な根拠はない。したがって、私のような見方をしてしまうため、情緒的に見られなかった。この見方は残念かもしれない。