牛の群を率いながら高山の、しかも猛吹雪の中を行く。映画だから演出はあるにしても、実際に雪があって、吹雪のようなものがあって、崖があって、そこから落ちたら助からないような道があって、ととにかく大変な所を進まなければならない。そんな場所での撮影は大変なことだっただろうと推察する。
　ここには若者と年寄りとの戦いがあった。牛を追ってどこかに連れていく、これは西部劇に出てくるキャトルトレイと同じことだと思う。それをしなくてはならない。それで、いつということが重要になってくる。というのは天候がじゃまをするからだ。天気が良ければいいのだが、いかんせん山の天気ほどあてにならないものはない。いつにするかは経験と暦が決める。それらを勘案して進むのだ。若者は科学的にみる。年寄りは経験を下敷きに暦を気にする。さて、どちらが勝つか。暦をいたずらに信じるのも良くない。しかし暦が迷信のかたまりとばかりは言えないこともある。
　暦の日付を無視して天気の良い日に出発した若者はどうなったか。道はついてはいるものの、崖っぷちの岩場の道は人が通るので精一杯。体重の思い牛が通るのは大変だ。何頭かが下に落ちてしまう。そこを過ぎれば、次に来るのは吹雪。何も苦労してそんな所に行かなくてもいいのに、と思う。春になる前にその場所に行かないと食料の関係かなにかなのだろう。吹雪に立ち往生しかけた時に、後ろから救いの手が、年寄りと牛の群が来たのだ。暦より早く出発していたのだ。生活の知恵は現実の生活から学ぶものなのだね。