アメリカの南部は未開の地のように見える。何十年か前の南部の話となると、「フライド・グリーン・トマト」を思い出してしまう。が、この映画はまったく違う感じがする。明るさがまったくなく、健全な家族が暮らしていないような町、西部劇の町がそのまま少し現代になっただけ、という感じで、そこには何の希望も、明るい展望もない。実際に住人に聞いてみたわけではないから、本当のところは分からないにしても、そんな雰囲気がした。
　そんな町の全てを取り仕切ってでもいるような女性がいる。それは彼女の姿形からか、さびれたこの町の唯一の集まれる場所の主人として、ただその存在があるだけなのかもしれないが、そうは見えない。あの女には何かある、と思わせるものがある。だからかどうか知らないが、彼女に結婚を申し込む男が現われる。じゃじゃ馬馴らしをやろうにも相手にならないのに、なんで結婚を承諾したんだろう。一方ではＯＫで、他方ではＮＯで男が救われない。そしてなぜかその二人が決闘することになる。殴り合いで決着を付けるのだ。勝ったからどうなるものでもないのに、なんらかの形で何かの決まりをつける、そうしないことには彼のほうが納得が行かないのだ。でも、それでもまだ、本当の意味での終了にはなっていない。
　なんだかとてつもなく変な話で、いかつい体つきの女が幸福を自らはねつけようとするに至ってはその真意がしれない。人は誰でも幸福を夢見、求めるものだと思うのだが、そうでない人もいるようだ。