これは実に奇妙な味わいの映画だ。中世のヨーロッパの、スエーデンあたりの伝説のような感じがする。だが、これが現代の韓国なのか。山奥の閉ざされた村という設定だから、こういうこともあるのか。日本でいえば「犬神家の殺人」のようなおどろおどろとした話に近い。
　この村に赴任してきた先生。バスを降りて、家の軒下にうずくまっている男がこちらをのぞくように見ていたかと思うと、次第にその目に熱がこもり、また力を抜くように口を開けている。彼はいったい誰なのだろう。浮浪者のようだが、そんな人がこのような田舎町にいるのはおかしい。だが、彼は特別のけ者扱いされてはいない。むしろある意味ではこの村全体に扶養されているかのようだ。次第にこの村における彼の存在理由を類推出来るようになる。これは、映画らしくない話だ。小説ならありそうだ。
　新任の先生が彼を「研究」するという客観的な立場が、ある時逆転してしまう。彼女自身が村人とこの男との関係におちいってしまう。彼女は彼に強姦されてしまうのだ。彼はこの村での気付け薬というか、カンフル剤というか、性的な安定剤のような立場にある。こんなことが、こんな人がいるのだろうか。先生の研究が成功したかどうか、彼女はこの事実を見つけただけで、1年経った。といって何をするわけでもなかったし、その力もない。彼の存在をそのまま認めるだけだ。
　この映画を見ていない人に説明するのは難しい。彼の存在自体が分かりにくいからだ。また、誰にでも彼を理解出来るものではないと思うし、となるとこの映画自体の否定につながる。私はこの映画を否定したりはしないが、どうにも完全に納得の気持ちにはなれないし、なんか胸がもやもやしたままで、映画は終わる。