すっごく不自然な舞台の芝居をそのまま映画にしたものだから、私は歯ぎしりして、こんなのは映画じゃない、映画じゃない、と叫びたい思いでいっぱいだった。こういうシチュエーションの映画って、少なくない。話の方向としては面白いから、いろいろなアプローチが試みられて、小説や、映画にもなっている。でも、そのほとんどが気に入らない。なぜなら、思いつきのアイデアは良しとしても、それを理由付けるうまい方法や、論理性に難があることが多い。全ての人に納得してもらうようなすごいアイデアで、しかも面白く、良い映画でもある、こんな映画がそう簡単に出来るわけもないが、それを望んでいる。
　要するに、あの老人と女性が入れ替わってしまうのだが、その理由がどうも分かりにくい。説明はなされるのだが、納得するところまではいかない。きっと、うまい理由が付いているはずなのに、ああそうか、と胸にすっと落ちるものがなかった。
　男性の方はともかく、女性の家族は変わった彼女を見抜けないのはおかしい。娘をその顔形だけでしか判断できないなんて、とても変だ。見た目は同じでも別人になっているのだから、何か変だ、というところから、いろいろ質問してみれば、中身が別人であることは分かるはずだ。あんなのは親子じゃないな。かたや、他人である夫は、すぐにおかしいことを認め、その原因までも突き止める。その行動力は当然としても、その何分の一かでも彼女の両親が持っていなかったことに、大いなる疑問を投げかけたい。
　まあ、これは作り話だから、そんなにむきになって言い募ることでもないが、作者の感覚に変だよそれは、と言いたい。