スティーブン・キングの作る物語に異議を唱えても意味がない。彼の不思議な世界は異様ではあるが、確固としたものがある。はまりこんだら抜け出せない魅力的な世界である。私ははっきりいって、面白いと思うことの方が多いが全面的に賛成するほどではない。この小説も読むつもりで借りてきて読み始めたにもかかわらず、途中で放棄してしまった。なぜか、ながったらしい前書きにうんざりしたからだ。小説はすべからく、すぐに核心に入ること、これが肝心なことだ。こういう点では、どんな小説でも、映画でも同じだ。特にＳＦはいつまでたっても流れが見えてこないので、いらいらする。小説を読んで哲学しようとは思わないのだから、もっと簡潔にしてほしい。
　ここは、死刑囚の集まる場所のようだ。死刑になる予定の人ばかりだと、どういう雰囲気になるだろう。自分の番がいつ来るのかが一番気になることだろうし、他人のことも気にかかる。ここまで来てしまうと、いっそ覚悟も出来ているだろうが、それでもいよいよその時が来たら、どうなるか分からない。死刑になるだけのことを自分がしてしまったのだから、それを受け入れることと観念もし、また神を信じていれば、そこに救いを求めることも出来る。宗教の根元にはなんとか「死」の恐怖から逃れたい、ということがあると思う。この世の「生」が失われても、別な新たな「生」があるのだと信じたいという気持ちが「神」の存在を作った。神も仏も人間が作ったものだ。実際にあるはずない。
　神が神である証拠は奇跡を起こすことにある。それは派手なパフォーマンスのようなもので、効き目がある。人を信じ込ませる最も最適な方法がそんな奇跡や奇術のたぐいだ。それはあんがい科学的な知識から作り上げることが出来るし、いってみれば頭のいい詐欺師のような人物のはったりかなにかが宗教家の本質だ。キリストだってそんなやからに過ぎない。ただ単に多くの人に認められているから、大きな顔をしていられるだけだ。
　何かここで私の宗教論を披露しても始まらないのだが、この映画がそういうことを扱っているから、どうしても書かざるを得ないのだ。人の為になる奇跡なら、別に害になるわけでもないからあってもかまわない。ここでは、おもに人助けに使われる。病気を治したり、死んだ生物を生き返えさせたり、それは一見良いことをしているように思える。だが、それはいいことか。医者の仕事と同じようでいて、本質的にはめざずことが別だ。彼のような奇跡を起こす男のすることが、その場しのぎのことだからだ。そりゃあ死んだ人間が生き返ったら、うれしいことだろう。でも人間がいつまでも死なないということになるわけでもなし、効き目は薄いがよく効く薬みたいなものでしかない。
　どうも、映画だから見たようなもので、小説をそうそうにあきらめたことは正解だったようだ。この手の話は苦手だ。奇跡はありえないし、まして人間が起こせるものではない。それが私の身体に染み着いた信念だから、こんな程度の話では納得がいかない。話として面白く出来ているのなら、それはそれで楽しめるのだが、こうもまともに来られたのでは興ざめだし、どうもだめだ。ネズミの使い方も好きでない。全ての出来事が作られ過ぎていて、乗れない。