マン・オン・ザ・ムーン(Man on the Moon)2000
監督 ミロシュ・フォアマン
出演 ジム・キャリー、コートニー・ラヴ、ダニー・デビート


 題名が何を意味しているのか。ちょうどこの映画の話の頃にアポロ11号の月着陸があったのだろうが、それと映画の主人公がつながっているのか。
 それはさておき、アメリカのコメディアンは多い。詳しくは知らないが、テレビで登場して、映画に進出する、というパターンがあるようだ。その前に舞台というか、小さな店でのパフォーマンスがある。そういうところで大うけして、テレビのプロデューサーに見出され、というこの映画のような順序をとって、上に上がっていく。どこが頂上かは、人それぞれで思うところは違うだろうが、映画に出るのは通常では成功の部類に入ると思う。なにしろ映画はアメリカ国内にとどまらずに、全世界に広がっているから。
 さて、そこだ問題は。成功というか、当人の満足する点がどこにあるかだ。この男の満足は、思いきり自己満足であった、かもしれないし、彼の芸は理解してくれる人だけのものかもしれない。どんなにとんでもない芸であろうとも、それを理解してくれる観客があれば、それは芸として成り立ったと言えるからだ。
 主人公を演じるジム・キャリーにしても、彼の芸風に似ていなくもない。それはある意味では一人よがりのわがままな芸であり、分かる人にだけ分かってもらえばいいのだ、というものであるようにも見える。ただ、人を笑わす芸というものが持っている二面性のうち、良い面がうまく当たれば、大成功になり、当たらなければ失敗になるのだ。私たちは主に成功の部分ばかりを見ているから、負の面を知らない。これは演じる側の、それも失敗した人たちの例をたくさん見てみれば、彼らの二面を見られるのではないか。

ホームに戻る

インデックスに戻る