めざめの時（L'annee de l'eveil）1991

監督　ジェラール・コルビオ 出演　グレゴワール・コラン、キアラ・カゼッリ、ロラン・グレヴィル

　良くある少年の年上女性への恋愛物語。積極的なのが女性の方で、その理由が自分の寂しさからくるもので、少年はいい思いをしたのか、いいように遊ばれたのか、どちらにしろ女性の気まぐれから始まったもの。でも、彼がいわば恩師の恩に背いた形のこの出来事が心の傷としていつまでも残ってしまうに違いない。だから彼は被害者のようなもので、可哀想ではある。
　いじめが日本の専売特許のようにされているけれど、そんなことはまったくない。人は他人をいじめて、それをよろこびとする気持ちが潜んでいるのだろうか。良くないこととは知っている。だが自分より弱いものをいじめ、痛めつけることに快感を覚えるのも又事実なのだ。特に自分がいじめられた経験があるとか、自由のない閉鎖された社会にある時、よけいそういった邪悪な心が芽生えてくるようだ。軍隊では誰もががんじがらめにされた厳しさの中に息抜きを見出そうと、いじめ、暴力がはびこる。それは何も日本だけのことではないようだ。意外な思いもする。個人主義の徹底した国の軍隊にはそんなひねたいじめがすきいるはずがないと思っていたのに、あるんだな、これが。人の弱いところを攻撃して、弱らせる。誰にでも弱点はある。単なる性格の弱さから、人格的な欠陥まで、そして他人には知られたくない隠し事まで、そっとしておいて欲しいことを、あげつらってあばいて痛めつける。
　この映画の場合、男が幼い感じで、可哀想に思えてくる。同い年でも女性のほうがませているのだから、年上の女性に本気で迫られたら、ひとたまりもないだろう。同情すべき点が少年にしかなくて、女性にはまったくないことが私が引っ掛かりを覚えるところだ。