ニック・カサベテスはジョンを超えられたか、の疑問は当然わく。私の考えでは、ニックは正面から勝負しては叶わないと思ったのだろう、似て非なる作風でやってきた。ジーナ・ローランズが出て、家族のごたごたや引っ越し、と舞台装置は揃っている。これで例えば喜劇を撮ったというなら、分かるが、似たようなシチュエーションだから困る。よく言えば分かり易い、悪く言えばありきたりだ。才能は遺伝しないらしい。これを言ったらおしまいか。
　どの家庭にでもある親子の確執は、これはもう絶対的な付属品だと考えればいい。うちだけはそれはないはず、なんて思うから混乱するのだ。ミルドレットが自分の娘も息子もうまく育てられなかった（親の考えるところの）のに、近所の子供がいくらかわいくて、慕ってくれるからって、それをいいことに愛情を向ける相手をはき違えてしまったのは困ることだ。長男を溺愛し、親を頼りにする弱い子にしてしまい、娘は自由な方針にし、勝手気ままにしてしまった。育ってから反省するものだ。だけど、一応大人になったのだから、それはそれで仕方ないこと、今度は自分の番だ。夫はどうしたのだろう、ここでは語られていない。死別か。BIG TOMMY　なる男性と親しくなる。だけど、ずっと年下だ。彼の方はまんざらでもない様子。演じているのがドパルデューだものだから、とてもいい人に見えてしまう。もしかしたら彼女の財産目当てかもしれない。彼との仲がどこまでいくのかはしらされないまま終わる。ミルドレットが多分マイアミに引っ越す飛行機の隣にトミーが座っていたら、これは面白かったろうに、その気配もない。幾分かの示唆でもあればいいのに、それとも彼女は一人でマイアミに行くだけでおしまい、ということなのか。または、これは私の考え過ぎか。誰だ他に見た人の考えを聞きたいものだ。