ねらいが常にはっきりしていて、どんな映画かも見る前にある程度分かるのも、毎回同じで、これで不足はないのだろうか、監督は。色んなものを作ってみたい欲望にかられて挑戦するのが芸術家ではないか、と思うのだが、ヒット作を作り続けるのも映画という芸術の一面であるかもしれない。一本一本見ている限りでは、相当に面白く作られてはいるので、楽しく見られるのだが、何かずしりと来るものがないように思えてならない。映画だから、芸術的な指向が一般大衆向けであるのも構わないことだし、又そういう映画は肩が凝らないでのんきの見られていいといえばいいのだが、伊丹十三ともあろうものが、つまり、かなりの才能を持つものがそのタレントをいつまでもつまらない方向に向けたままでいることに不満である、ということだ。彼のエッセイなんかを読んだ印象と、彼の映画とはまるで別の人の作品のように思えてならない。映画という少なからぬ金のかかるものを手掛けると、どうしてもその回収をまず考えなくてはならなくて、こういう結果になってしまうのか。多分、これからも伊丹印の映画を作り続けて行くだろうし、私も見るだろうが、かわりばえしないだろうな。