予告編では、あまり面白そうに思えなっかったけど、本編は良かった。オーストラリア自体が田舎なので、映画も悪く言えば洗練されていないという印象が強いが、この映画ではかえってそれが幸いしている。それは、見栄えの良くない女性の奮闘記が、例えばアメリカ映画だったら、きっと決まり切った展開になるだろうが、西半球ではぜんぜん違うから、面白い。
　ミュリエルとその仲間は結婚しているのもいるし、していないのもいる。ミュリエルは恋人さえいない。その内の一人の結婚式のブーケを受け取ったのが、他ならぬミュリエルだった。一番現実性の少ないと思われていた彼女に次の番が回ってくることになるかどうか、ここからの話はとてつもない変化球を見せる。
　どうせ見るなら、こんな意外性のある方が楽しいし、見る価値もあるというもの。結婚、家族、犯罪、離婚、再会、友達、病気、偽り、理解、和解、死、出発、と、こんな具合に物語は進むのだが、どんなことが起きようと、自分の道を進むしかない、という居直りが信条のような彼女のたくましさがいい。とはいえ、いつも元気というわけにはいかないが、なぜか明るい。それはどこからくるのか。自分というものを知っているから、ということのように思う。高望みをするわけではないが、せいいっぱい努力する気持ちはある。泣いて落ち込んでいては、次なる出発につながらない。結婚は最大の目標だけど、肝心の相手に恵まれていない。彼女をとりまく状況だけを羅列してみると、とんでもなく暗い気持ちになってしまうが、ものはかんがえよう次第。彼女のように泣きながら明るく生きるのが正解のようだ。