初期の作品の常連の俳優が出ている。彼はいったい何歳くらいなんだろう。若いのだろうが、老けてみえる。この映画でも役としたら、学生だから、20歳位でのはず、でもそうみえないものだから、こまってしまう。そして、暗い顔をしているんだ。若者らしい明るさがない。
　バレーの踊り子が昔の思い出を探りに湖にやってくる。13年前のことだ。恋愛は障害が多くあればあるほど強くなるものだし、物語にもしやすい。この話ではそう困難な状況ではないが、少し上手くことが運びそうになったら、男が事故で死んでしまう。病気で、というのならよくある話だが、事故で死んじゃうのは間抜けかもしれない。恋愛が成就するのはめでたいことだから。そうそう、彼の死は神が決めたことなのでしょうね。この映画では言及してないが、神の存在に疑問を投げかけているようだ。二人が結婚をして、幸福になりました、っていう結論ではだめなのか。

　チャイコフスキーのバレー音楽に乗せて、バレリーナたちが舞台で舞う。そのスムーズな動きは見ていて、とても気持ちの良いものがあり、その姿はドガの絵のようだ。爪先で立つ姿、しなやかな動き、そのどれもが美しい。実際のバレーはどたどたとした足音に幻滅したものだが、映画でこうやって見せられると、思わずきれいだな、と思ってしまう。
　思い出は思い出として、今生きている自分は今の自分を大切にしなくてはいけない。バレリーナとしての人生もそう長くは続けられない頃になって、いろんな思い出が浮かんでくるのだろう。あの13年前のことも思い出の一つだ。