ナイト・アンド・ザ・シティ（Night And The City）1992

監督　アーウィン・ウィンクラー 出演　ロバート・デ・ニーロ、ジェシカ・ラング、クリフ・ゴーマン、アラン・キング

　アメリカには弁護士がたくさんいるようで、それだけ必要にしている人がいるからだろう。なんでも裁判の国だからこそ、身近に弁護士を誰もが持っている。日本ではそもそも裁判が特殊なことと考えられていて、犯罪とかに関わらない限り、裁判所に出向くことはないだろうと思っている。日本で弁護士になるのは小数だから、一種エリート意識を持った人間の集団が弁護士のような感じを私は持っている。アメリカでは事情が相当違うようだ。
　ニューヨークの弁護士ハリーが口八丁手八丁でけちな商売をやっている。どういうのかと言うと、裁判の前の段階で手を打つ、示談専門のような弁護士なのだ。これだと時間はかからないし、すぐに金になる。いくらアメリカでも裁判になれば時間がかかるだろうから。弁護士が原告、被告双方の間に立って、うまくまとめる。けちな仕事だ。
　少しはまともなことをしようと、何に目を付けたかというと、ボクシングの興業だ。素人がやくざな興業なんかに手を出すのはよした方がいいのに。興業はかなりやばい筋の仕事なのだから、そして必ずしも成功するとは限らないのだ。２万５千ドルの資金の工面に奔走するが、なかなかうまくいかない。彼のいつもの手は使えないから困る。いつもとは違うグラウンドで走り回り、あぶない金もつかまないわけにはいかなくなってしまう。なにしろ試合はセットされているのだから。
　例えば、映画一つとっても、会場を借りて、客を集めて、入場料をとり、足が出ないように案配するのだって並大抵のことではないのだ。大博打を打つ、賭けのようなもの。資金の件で、バーのオーナーから借りられることになるが、オーナーの妻といい仲になっているのを彼に知られている。当然彼は仕返しに出る。まあ、タイトロープを渡るがごとく生きるのも人生、ボクシングにわんさと客が入り、成功するかどうかはあまり問題ではなかった。ハリーにとって本当に生きることが出来た数週間だったのではないか。
　デ・ニーロが最も生き生きと演じ、楽しんでいる様子がよくわかった。