予告編を見るかぎり、見つけられたインディアンを白人たちがかつてのように迫害するという過ちを繰り返す、とこういう話のように思えた。だが、本編はずっと真摯な大人の童話となっている。
　トム・ベレンジャーがアル中のぐーたら男を演じている。3人の脱走兵を追いかけていく、よくある西部劇の常套の話になっている。その彼を追う10数人の男たちも出てくる。都会はともかく、アメリカの広大な自然はまだ手つかずのままになっている。前人未到の地も多いだろう。そんな場所にもしかしたら、ネイティブアメリカンが隠れ住んでいるかもしれない、という設定になっている。それはロマンのようなもので、事実ではない。だが、本来は北アメリカは彼らの土地だったのだ。それをいうと、日本列島がアイヌのものだった、という事実も浮かび上がってくる。ただし、いいわけをするわけじゃないが、日本のは何千年も前のこと、アメリカのは数百年前のこと。ともかくも、歴史は厳然とある。隠してもいつかは日の目を見るものだ。隠すことが出来た時代は去りつつある。アメリカの正義はいつまでも正義であり続けない。昔は数多くあった西部劇がほとんど廃れたのにはわけがある。嘘をつき通せなくなったからだ。本当のことを描いたら、残酷物語になってしまう。この映画では、サンドクリークの虐殺が紹介されていたが、そのようなことは数知れずあったはずだ。黒人奴隷について書いた時にも思ったことだが、こういう土着民というか、ネイティブな人たちは滅ばされる運命なのだろうか。インディアンは相当抵抗したようだが、それでもコンティネントな奴等は数や武器で圧倒したのだろう。アメリカ大陸全体がそうだ。ヨーロッパから見ての新大陸は宝の山のように思えたのだろうし、実際にそこにあった資源や土地を略奪したのだ。それで、そこにもともと住んでいた人が邪魔になる、という逆説を弄した。ひどいことだ。今なお、アメリカンネイティブは居住地に住んでいる。
　ドッグマンというシャイアンが今も昔のままの姿で生活しているところを発見される、という話はあり得ないものだ。だが、あの広大な土地で、しかも山奥なら、もしかしたら、と思わせるものがある。それは、夢物語かもしれない。だけど、この映画を作ったタブ・マーフィーにはそうではなかった。彼が望んだ夢である。実際には彼らが隠れる場所さえも根絶やしにし、囲いを設けて彼らを閉じこめて、夢でなければ実現できないことにしてしまったのは誰か。
　山奥の滝の向こう側に彼らの村に続く道がある。まず始めに彼らと出会ったのは、三人の囚人だった。この三人は彼らにとっては邪魔者、よけい者だ。見つけられることは破滅に通じる。自分たちを守るために、まよわず殺した。次に、三人を追ってきた一人の男が来た。ルイス・ゲイツだ。彼は三人の男は見つけられなかったが、折れた矢を見つけた。三人に何かあったと思った。一度町に帰って、彼が感じた何かの正体を知りたく思って、インディアン研究者のリリアン・スローンを訪れる。ルイスの予感は素人のそれだった。彼女は一笑に付した。だが、執拗な彼の要求に根負けして、何日かつき合ってやることにする。
　やがて二人はインディアンに遭遇する。ネイティブは白人を警戒している。これは当たり前だ。これまでの仕打ちを考えてみれば、警戒しても警戒しすぎることはない。リリアンが言葉を話せることから、彼らに受け入れられるようになる。そこにルイスへの追手がやってくる。ルイスの義理の父親がその追手に加わっている。彼が川に流されてしまい、命がけで助ける。ここのところが泣かせどころ。ルイスの妻が川で亡くなっているのだ。こういうセンティメントに訴えかけるところなんか、いいね。