中国映画はずいぶん見てきたが、台湾のはホウ・シャオシェン以外は見たことがなかった。それで、この映画の予告編だけは何回も見たので、気にはなっていた。橋幸夫の歌が中国語で流れる不思議さが耳に残る変な映画、という印象だった。
　本編は予告編の数倍良かった。見て良かった。金持ちの家の子供をさらって身代金をせしめようとたくらんだ二人組。一人は元警官。もう一人はぼーっとした青年。台湾でも受験戦争があるようで、塾も盛んなようす。そういえば韓国もそのようだし、フランスだって例外ではない。それじゃあどの国の子供が受験から解放されているのだろう。そんな幸せな国はどこにあるのか。
　一人つかまえるつもりが、なりゆきから二人になってしまう。身代金の受け渡しもうまくいなかい。その上、元警官は交通事故死してしまう。二人の子供を町なかに置いておくのも危険なので、田舎に連れていくことにする。海岸沿いののんびりとした所。遊びに来たのなら、いい場所かもしれないが、それどころじゃない。始めは厳重に手足をしばり、さるぐつわしていたが、子供（中学生）なのだし、身体も大きくないし、自由にしてやる。それからがまったく思いがけない展開となる。子供二人が田舎の家の人と仲良くなってしまう。というか、慣れてしまうのだ。田舎の実家も観光業が不景気だし、金は欲しい。そのためには大事な子供だ。なぜか、床上浸水になったり、この家は面白い。子供たちも受験勉強も出来るし、何も不足はない。この上は、身代金がちゃんとこの家の人の手に入ればいいだけだ。誘拐事件を起こし、身代金を要求したのだから、警察が迫ってくる。さあ、この家族の運命やいかに。と手に汗を握るところ。映画をここまで見てきた者にとって、この家の人には同情的な気持ちになっている。そこをはぐらかすことなく、しかも事件をきちんと終わらせてしまう見事さ。いや、大変けっこうでした。