私は題名を「口径不可」とした。口から飲めないのだから、意識不明な状態で、身体にはいろんな管がつながれている。あまりいい眺めではない。病院は素敵な場所なはずはなく、なるべくなら行きたくない所だ。だが、行かなくてはならなくなることもあるし、その時は仕方なく受け入れよう。
　ロンドンのことは知らない。この映画のロンドンがどのような場所なのかは、パンフに書いてあった。いわゆる、危険な場所だから、観光客は足を踏み込まない方がいいという所らしい。
　麻薬を常用している人がたくさんいたりするのも見たことがない。日本は表向きでは危険な場所はないということになっている。裏社会ではそんな人や場所がないわけではないだろうが、おおっぴらにはない。まして自分のうちの人が麻薬をやっていたり、アル中だったりしたらどうだろう。生まれた時からそんな環境だったら、特別ひどいことだとは思わなくなっているかもしれないし、人間はどんな環境をも受け入れる性質を持っているから、親と同じようになってしまうだろう。だが、それじゃいつまでたっても進歩というものがない。どこかで悪癖を断ち切らなくてはならない。それは、いつ、誰が、が問題だ。自分はもうだめだ、と思ったらそこで歩みは止まってしまう。今、自分がやらねば、と思い、すぐに実行すること。これが重要条件だ。だけど、むずかしいだろう。生活が安定していて、心配事もなく、明日も保証されている。その上、薬をやっている、というのなら、死んでしまえ、だが、条件が正反対だから、大変なのだ。私が彼らに向かってどうのこうの言うことはない。全て社会の問題にしてしまえば済むことではないのだが、やっぱり社会の問題だろう。正義が正義のままで通用しない社会、それこそ、働いても働いても楽にならず、のような国。やけっぱちになるのも分かる。だが、と堂々めぐりするばかり。私の手に余る問題のようだ。そもそも、近くに毒があるというのが良くない。手を出そうにも出せない環境ならいいわけだ。そうだ、そうしよう。申し訳ない、まったく解決にもなんにもならなかった。