この映画は原節子の美しさに全国民が魅入られていなければ成り立たないものだ。彼女が美人であることは明白なことだが、それでも誰にも好まれたかというと、確かなことは分からない。どれだけ美しくても、あくまでも客観的な基準なのだから、絶対的な美とはなりえない。最大公約数の美しさであることは認めても。
　なにはともあれ、そんな美人が見合いの相手となって現れる。35才独身男は見たとたんに参ってしまう。この見合いにまるで乗り気でなかったからだ。断りたかったところを、どうしてもという誘いに仕方なく、断るつもりで来ていたのだ。
　そしたら、やってきたのが原節子、これじゃ誰にも断れない。トントン拍子に話は進み、相手の家を訪れることになる。時代は戦後まもない頃、大きな屋敷ではあるが、なんだかあちこちにがたがきているようす。そこにいる住民も同様。戦前は貴族か華族でもあったのであろう、しかし戦後は生き馬の目を抜く世の中に以前のように生活することがかなわなくなっている。そこで彼らに必要なものがある。それは金だ。すでに土地家屋は抵当に入っているらしい。金を得る最も簡単な方法は娘を金持ちと結婚させることだ。まず、この手しか方法はなさそうだし、また現実的だ。というのは幸いなことに娘がすこぶる付の美人ときている。まあ、こんなにうまい具合にことが運ぶとは思ってもいなかっただろうが、なにしろ原節子だ。久我美子でもいいけど、華やかさでは原節子にかなわない。
　とにかく、新興成金である男性に惚れられたのだから、そこに乗ってしまえばいいわけだが、どうも、その仕掛けを知った男が、気乗り薄になってしまったのだ。そりゃあそうだろう、いくら美人でも金のために近づいてきたのだから、それではいやだ。なにしろこれから先は長いのだ。本当に好きになってもらわないと結婚できない。まずはきちんと付き合って、恋愛してから、となる。はたして、この後の行方はどうなるのであろうか。映画ではそこまで描いていない。　心配？　うーん、わかんないなあ。主題歌が耳に残った。