離婚が日常茶飯事であるアメリカでは、夫婦がけんかして、別れる別れないと騒ぐのは当たり前すぎて、こうして映画にするのもはばかれるくらいなのではないか。現に、ウディ・アレンとミア・ファローが喧嘩別れしたのだもの。結婚生活が死ぬまで保つことは奇跡に近いことになりつつある。人間だもの、恋愛感情だけで結婚を維持するには無理がある。これは認めよう。だが、だったら結婚しない関係もあるのだから、そうすればいい。それで全て解決か、というとそうでもない。ウディとミアの関係がその理想的なものだったにもかかわらず、裁判沙汰にまでなって泥沼化してしまったことから見ても、男と女が一緒に暮らすことが、別の言い方をすれば、相手を限定した一人にすることが、どんなに難しいことか、が分かる。だが、結婚が究極の選択ではないけれど、最善であると思う。

　友人であるジャックとサリーが突然別れるという。ジャックの浮気が原因。よくある話。その話を聞いたゲイブとジュディの心は千々に乱れる。そして、嵐が到来する。気持ちの整理が付かないまま、友人夫婦を元の鞘に戻そうとするうちに、何だかこの事件がおかしな方向にいってしまう。雨降って地固まる、とはよく言ったものだ。終り良ければ、全てよし、という言葉にも重みがある。
　私自身も結婚を全うしているとは言えない。それはまだ途中にいるからだ。これまでは何とかうまくやってきてはいるが、将来はわからない。うまくいくように努力することにやぶさかではないが、どこにも保証はない。毎日の生活が判で押したようなもので、取り立てて特別な出来事が起こらないから、離婚に至る事件も起こりようがない。おだやかに何事もなく、結婚生活が送られればそれに越したことはない。そうは思っていても、ごくありきたりなことから坂を転げ落ちるようなことになる。この映画では、友人夫婦の騒動をまとめようとするうちに、余震が起こる。あちらの揺れは納まったのに、こっちは震度５で家庭は崩れてしまった。

　深刻に考えてみれば、そうやすやすと結婚生活が成就するわけではないのだが、　惰性の波に乗る　　恋愛が持続していると信じ込む　　ダブルブッキングをしない　　世間体を考える　　新しい恋愛は不可能と思う　　趣味の世界にのめり込む　等々、傷口は隠していつの間にか治癒していた、ということになる。かなりの人がいろんな手を使って離婚を避けようとする。それが出来ない人、不可能になった人がそうなってしまうのだろう。