普通、小説というのは作者が体験したことをもとに書くことが多いと思うが、この映画に出てくる男は、こともあろうに、まず始めにシナリオを作っておいて、それにそって女性と付き合い、その反応を小説に仕立てようというのだ。テレビのどっきりカメラの類のいたずらは好きでないので、この映画はちょっと見る気がしなかった。でも見てしまったのは、覗き趣味のようなものが働いたのだろう。
　相手になる女性がきれいでないとか、年とっているとか、ブスだから他のにしようとか、主人公であるもの書きの男は言いたい放題だ。彼だって、おしゃべりで、軽薄で、ちっともかっこよくない奴なのに。
　意地悪で、いけ好かない映画ではあるものの、映画をはなれて素直に考えてみると、容姿で相手を選ぶことはあるし、ブスは嫌だなとも思うし、自分のことを棚に上げておいて、贅沢なことを考える自分を発見するわけです。でも実際は、人間は姿形だけでは決まるものでもないし、男と女は表面上では分からない引力のようなもので引かれ合うものなのです。
　アイデアとしてはすごいし、見ていてワクワクするし、でもこれは所詮作られたものでしかないのです。
　普通の恋愛映画ならこれからもいくらでも作られてゆくでしょうが、こんな映画はもういいです。