1492　コロンブス（Conquest of Paradise）1992

監督　リドリー・スコット 出演　ジェラール・ドパルデュー、シガニー・ウィーヴァー、アーマンド・アサンテ、フェルナンド・レイ

　ヨーロッパの人間が初めてアメリカに到達したのは、コロンブスが最初ではないらしい。ようするに、公に大々的に大西洋を越えて彼の地に行ったのが、コロンブスだった、ということだ。大西洋はそれほど大きな海ではないし、何かのはずみで漂流して、着いてしまった人もいたに違いない。なにしろ、日本人が、はるばるアメリカまで持ってゆかれた例もあったくらいだもの。だから、今年500年記念をする必要性は特別ないことになる。このことに対する反発もあって当然だし、彼を英雄視するのは変だ。
　だが、彼を帝国主義の極悪人だと言って、非難するのも大人気ない気がする。それは、当時の世界を見れば、ほとんど全てが君主制で、戦争は日常茶飯事のことであったろうし、したがって、殺戮も数多くあった。そんな中で、今の感覚でものを言ってみて、もし彼が生きていても、いったい何が悪くて非難されているのか分からないかもしれない。だからといって、彼の行為を免罪するのはいけないが、理解はしてあげなければいけないと思う。この映画のコロンブスが、ただの残虐な侵略者としては描かれていないが、それは彼の実像でもあり、虚像でもあるだろう。世の中の進歩がどのような形でなされるものか、残念なことだが、スムーズに発展しないのは歴史をみれば、一目瞭然だ。ご覧の通り、多くの犠牲の上に立って、歴史は進んできた。現在だって、未来だって、あまり明るい明日があるわけではないのは明らかだ。悲しいことだが、それが現実だ。ただ、それを見過ごすことは嫌だ、と思い、何らかの行動を起こす人が増えてきているのが、少しは前向きの姿勢かもしれない。少しづつ良くはなってきている。その歩みが遅々としているのが、歯がゆいが。
　彼がしたかったこと、それは船を西にとって、アジアへの近道を見付け、交易で優位に立ち、何らかの権利を得たかったのだろう。それは、叶ったか。アジアへ着くつもりが新しい世界の発見に変わってしまったことに、がっかりしたのか、それとも別なより素晴らしい大陸の発見に小踊りしたか。それはわからない。彼があの時、そうしなくてもいつか誰か別の人が同じことをしたに違いないし、それは歴史の必然性で、例えば、大陸の原住民が逆にコンティネントを「発見」したか、というと、それはなかったに違いないと断言出来る。そうなると、今見る歴史でしか選択の余地はないことになる。歴史の必然が働いて、なるべくしてなった、ということだ。この考え方って、無責任かな。