篠田正浩は信用していない。えらそうなことを言っているわりには肝心の作品の出来が悪いからだ。昔のはともかくここんとこのはだめだ。これはいわゆる少年3部作の最後の作品で、いわば総決算なのに、最高に良くないのはどうしてだろう。だんだん悪くなる感じだ。長塚京三が良くない。彼はうまくないのだ。最近ずいぶん映画に出るようになったが、実力が伴っていないようだ。実力がなくても作品に恵まれればなんとかなるものだが、それも期待薄、となるとどうしようもない。
　去年から1年以上、予告編を見てきたので、それからのイメージで瀬戸内海のどこかの島が舞台なのだろうと思っていたら、島から出て、九州に行く船の中の話なのだ。いっそ「瀬戸内海物語」にすれば良かったのに。
　時代色をきちんと出さなくちゃいけないのに、それが出来ていないのは残念。アメリカ映画はこれは得意。見事にこなす。そこは本当に大事なところだ。まずは背景を信じ込ませてから、物語へとなるのだから、そこがちんけだと、全体が嘘っぽく思われてしまう。
　そこを強引にスキップしたとしても、この映画は合格点には届かない。そもそもこれは実話に近いはずだと思うのに、実際にあったことのように思えないから不思議。営業上からか、下手な役者を使わなくてはならなかったようだが、それではだめだ。監督はそういう時にがんばらなくちゃいけない。「少年時代」はそんなに悪くなかったのにな。良くなりそうな場面があったのに。たとえば、船上の映画上映なんかは盛り上げるのに最適だった。そこをまるで素人か、テレビドラマ並の演出でぶちこわしている。それが残念だとかいう気になれないというのも情けないことだ。