今回はダンスを取り上げたか、というのがまず始めの感想。特にこの試写会はダンスをする人ばかりが見に来るものだったから、見ていて、まわりの人たちの反応が面白かった。平均年齢40〜50の女性が大半のダンスを習っている人たちにとってはこの映画に出てくる場面のいちいちが自分の体験したことだったろうし、ステップの一つ一つに自分の時のことを思い出さずにはいられなかっただろう。だから、反応がとてもいい、これは他の誰よりも、この会場のものが最高に違いない。だって、ダンス教室に通ったことのある人はそう多くはないと思うからだ。だけど、ダンスを習おうと、教室の前まで来て、中に入るのを躊躇する気持ちや、次第にダンスに気分が乗ってきて、会社で仕事していても、机の下ではステップを踏んでいたりするところ、ダンスを習っていることを隠そうとすることなんか、実に分かるとことだ。実際、ダンスをうまく踊れたらいいな、とは思う。だけど、教室に行ってまでして習おうとまでは思わない。うまく踊れたら楽しいだろうな、と思うだけ。楽しく踊れるようになるまでの苦労や、恥ずかしさはなしで、美しく楽しく踊れたら最高なのにな。学問に王道なし、か。何事も簡単には身に付かないものだ。
　世の中にはどれだけの趣味というか、楽しみがあるだろう。私のは映画だが、社交ダンスは知ってはいたが、自分がやるつもりはなかった。何が苦手かと言って最高のものは、私にとって踊ることだ。運動神経がにぶいことから、どんな種類の踊りもダメだ。こういう踊りでなくても、流行のが出来たらいいな、とは思うものの、出来そうもない。
　さて、もしこの映画の主人公のようにどこかの教室で社交ダンスを習うことになったとしよう。どうなるか、きっとこの映画のような具合にことは運ばれるだろう。ただし、まさか競技会に出たり、イギリスに行ったりまではしまいが。この映画の何が引きつけるものがあるのかを考えると、それは思い当たる節が誰にでもあるような普遍性だろう。誰もがこうしたら、こうするだろうし、こうしたいと思うだろうし、という壺をきちんと押さえている。これはきっと話を作る段階でじっくりと考えているのだろう。誰にでも分かるのは簡単そうでいて、実は一番難しいことだと思う。良くある難解で独りよがりな映画の作家に見てもらいたい作品だ。