ジュリエット、アレックス、デビッドが新たな同居人を選んでいる。なかなか彼らにフィットするようなのがこない。三人の基準は高い。というより、単に彼らの好みにあわないということなのだろう。このくだりは「コミットメンツ」に似ている。人はそのプロフィールにその中身があらわれる。そうでない部分も多分にあるのだが、姿形、服装がその人のかなりの部分を知る手がかりにはなる。
　ここに、一人の男が三人の目に叶う。彼は小説家と自認している。名はヒューゴ、どことなくミステリアス。なぞ多きヒューゴは、それもそのはず、大金を持っていた。薬をやっていて、死んでいた。いや、順番が違った。死んでいた、大金を持っていた、こうなる。つまり、相当怪しげな人物なのだ。そんな人間の持っている金がまともなはずがない。だけど、目の前に死体と札束を積まれたら、どうする？　その1、警察に届ける。その2、警察になんか届けない、金はねこばばする。この第二の方法は悪魔のささやきだ。眼鏡のデビッドは警察組だった。当然そうするのが当然と主張。だが、多勢に無勢、金の魅力の前に負ける。だが、問題がある、死んだヒューゴの始末だ。死体が自然に消えてくれたらいいのだけれど、そうもいかない。燃やすなり、埋めるなりしなければならない。ジュリエットは医者だから、都合がいい、と考えるのが普通。彼女がうまく始末してくれそう。だけど、いつも扱っている死体と、この死体とは違うらしい。切り刻むのは嫌だという。くじ引きで、その役をふることになる。
　おめでとう、あたりくじはデビッドに。損な役を引いてしまった。誰だって死体の始末なんかやりたくない。何も好き好んで、引き受ける人はいまい。だけど、三人のみんな、あるいは誰かがやらなくてはならないのだ。
　毒を食らわば、皿まで、一番尻込みをしていたデビッドが火事場のくそ力を発揮する。人間、与えられた役割以上の事をやってのけちゃうこともあるものだ。
　話の前段階が終わり、死体を始末し、金を手にし、めでたし、で終わるわけがない。彼らの新たな敵はヒューゴと彼の金を追いかける男たちと、警察だ。警察はじわじわと、男たちは突然にやってきた。ここで突然江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」に変わる。デビッドが屋根裏をねじろに、なにやら作戦を練っている様子。もう、この段階でデビッド対残りの二人というふうに分かれている。始めの頃からすれば、立場の逆転だ。
　やってきた男たちをはねのけ、警察をも撹乱し、最後に笑うのは、一番働いたデビッドのはずだが。最後に一ひねり、二ひねりあって、鞄の札の行方は、、、。
　死体を切り刻み、ハンマーで叩き、血ははでに流し、見ていて、痛い。血の色を引っ込めれば、ヒッチコックだ。ここはやはりイギリス映画だ。けれんみがないもの。中身で勝負している。面白かった。