冒頭、ベッサメ・ムーチョと歌い出す森繁。所は東京の埋め立て地らしい。こんな東宝製の映画がたくさん作られたのだろう。その一つも見ていなかった私でした。新東宝もこんな感じか。1961年だから、オリンピックの工事の前になる。東京がまだ混沌としたいい時代。やくざの土地争いをちゃかして描いている。当時ではモダンなよそおいの映画だが、今見ると、とてつもなく変だ。こういうことってよくある。で、こういうことにならない映画はいつまでも残る傑作となる。そうとばかりは言えないか。でも、黒澤のは変なことはないものね。
　内容をどうのこうのする映画ではない。森繁が中途半端な年齢で、ぱっとしない。フランキー堺ははつらつとしている。淡島千景が美しい。こんなところを見ていた。それに東京を。有楽町のガード下風なセットもあった。ありそうでない架空の場所、架空の人物、これはこれで見られる映画にはなっている。愛川欽也がずいぶん若く出てくる。気を付けなければ別人のよう。だが、このあと7、8年で人気者になるのだ。この映画で見る限り、そうなるような人には思えない。あまり冴えない3人組の一人でしかない。こういう映画もたまには見たい。