これは前に見た「青島アパートの夏」に似ている。ある一つのアパートに暮らす住民の話だ。ただし題名からわかるように、こちらは北京。ただ私には青島と北京の違いは分からない。どちらも都会だしなあ。
　向導出版社の社員住宅だから、みんな顔見知りだ。文化的な仕事をしているので、普通の人よりいくぶん特権意識があるみたいだ。でもそれも仕事の内容がそれぞれ違うから、微妙に住民間でも違いがある。例えば、売れっ子の詩人なんかは、たいしたいきおいで、有名人きどりだ。いわば、会社と住宅と、24時間息を抜けない環境にあるということだ。これは疲れる。仕事場での地位が家に帰っても忘れるわけにはいかないのだ。留学してより高い技術を学ぼうとしている季子（チーツ）が、そのために嫌な上司ともある程度つき合わなければいけなかったりする。100パーセント合理的なアメリカだったら、あんな上司は存在しないだろう。だが、中国にはまだまだいそうだ。思うことと実現できることの乖離は大きい。だが、それでもやりたかったことが実現出来なかったからと言って、ただがっかりするものでもない。チーツが留学をやめたことは、地に足を付けていこうと考えたからに相違なく、ということは、彼女がそう決めたことだ。誰かのあるいは何かの影響でそうしたにしても、この時点での最良の選択だと思う。
　中国の人たちも懸命に生きているんだな。こうして映画を通してしか知ることは出来ないが、どこも同じ、いや、日本は別。のんき過ぎる。