イラン映画はキアロスタミのものしか見ていないので、比較することが出来なかったが、ようやく別な監督の作品が見られることになった。これは見逃す手はない。映画は日本風に言えば、大晦日の午後に始まる。それは12月31日ではなく、イランの暦だから、ちょっと失念してしまったが、なんか中途半端な日付だった。時間もそうだった。それはともかく、ここに7才位の女の子がいる。お正月のお祝いの金魚が欲しくて、母親にねだっている。自分の家にも金魚はいるのに、この女の子はどうして金魚が欲しいのか。お店で見かけた金魚は水槽に入っているから、水がレンズになって大きく見えてしまったこともある。また、家のとは違って、大きなヒレを持っている金魚なのだ。さあ、もう欲しくて欲しくてたまらなくなる。こうなると女の子の気持ちはただあの金魚だけに向けられている。と、ここまでが話の起点。
　「開運なんでも鑑定団」というテレビ番組を見ていて、つくづく思う。あんながらくた集めてどうなるというの、とか、あんなものが何十万円もするのは信じられない、とか、つまり価値観の違いが相当ある、ということだ。ある人にとっては宝物が、別の人にはただのがらくたでしかなかったり、国宝級のものが分からないものだから、粗末に扱われたりする。でも、別な見方をすれば、彼、彼女らは子供の心を持ち続けている人たちなのだ。分別臭くそういう人を批判がましく見るのは間違っている。この映画はそれを見極めるリトマス試験紙のようなものだ。あの女の子とお兄さんのいじらしい行動を見たら子供の心がかえってきて、なつかしさといとおしさで胸がいっぱいになる。