周恩来(周恩来)1991
監督 ティン・インナン
出演 ワン・ティエチョン、タン・シャオチュアン、チャン・クーヤオ、リュウ・チュン

 中国は、まだ本当のことを気兼ねなしに描くことの出来ない国であろうと、推察するものですが、こういう政治向きのことは、公に認められている方向にしか、描くことは出来ないと思うし、特に、毛沢東や周恩来に対してはあからさまに批判することは出来ないのではないか。それにこの映画はそういう御墨付きではあるものの、毛沢東を主人公にしてはいないところに、まだ周さんの方が人民により親しまれていたことを物語っているように思えるし、この映画の毛沢東は影が薄いように見える。彼が中国建国の父ではあっても、四人組につながっていることは明白であるし、直接に名指しで批判はしないものの、そこにつながる暗い影のようなものは見え隠れしてしまうのをまったく隠すことは出来ない。だから、偉人伝のような調子で描かれたこの歴史上の人物は理想的な道を歩いているに過ぎない。そのような描き方しか出来ない状態を遺憾に思う。
 この映画でのいいところは、周恩来に扮した俳優が本物にうりふたつだということだ。彼がいたからこそこの映画は成り立ったといってもさしつかえないし、また、彼がいなかったら、映画そのものが日の目を見ることはなかったのじゃないだろうか。だって、毛沢東のそっくりさんはたいして似ていないし、彼を主人公にしても成り立たないだろう。他の要人たちも誰が誰とは知らないので、判断付きかねるものだが、本当にそっくりなのは周さんの役者だけではないか。そこがこの映画の利点であり、又その逆でもあったろう。

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