この映画の券を買う時、ちょっと言いよどんでしまった。店の女性に向かって、この題名を言うのが少しはばかられたからだ。まだ、日本だからいいけれど、アメリカの窓口ではどうだったろう。
　さて、映画自体も題名どおりの危ない内容だった。パンフレットにある「親友の恋人を愛してしまった」以上の話なのだから。三角関係という昔からあることだが、どういう形で推移するにせよ、完結するにせよ、三人それぞれに相当葛藤が生じる。フランクとジョセフがいて、サラという女性がいる。とても仲良しだ。サラは男性のどちらも好きだ。さあ、こういう状態をどう打破するか、が問題だ。抜け駆けをすることも出来るが、友達として、それは卑怯だ。だったら、相談づくでいくか。それとも、男二人がサラにどちらを選ぶか決めてもらうか。そうそう、決闘という手もなくはない。
　映画の冒頭で、どちらかというと、今現在ジョセフに傾いているサラがいる。そこで、はずみで、フランクはジョセフにサラにプロポーズしろ、と迫る。ここで、ジョセフは渡りに船という感じ半分、思いがけない展開に戸惑う気持ち半分、Will you marry me? サラもフランクに急かされた形で Yes と応えてしまう。こうなると、一気に結婚へとなってしまう。
　アメリカでは離婚する率が50パーセントを超えているという。そんな状態を知りながら、それでも尚、結婚する。そうか、結婚するから離婚できる、とも言えるから、まず結婚ありき、か。だから、この成りゆき結婚は二人が純粋に望んでしたものではなかったのだ。少なくとも状況はそうだった。だけど、それでもうまく行くか、うまく行かないかは決められるものではない。どういうふうにくっついても、だめなものはだめ、いいものはいい。だが、はじめっから、危険をはらんでいたこの結婚に早晩危機が訪れるのは目に見えていたことだ。それなら、対策をたてておくべきなのに、それもしない。危険な二人がのべつ顔を合わす状態なのだから。いわば、この危機も起こるべくして起きた。だけど、こういう場合、どうするのがベストなのだろう。結婚という一応最も堅い結びつき以上の絆を絶ちきる力が他にあるのは、正しいとか、正しくないという問題ではない。むしろ、結婚が最高、最善と考えるほうがおかしいのかも。だけど、結婚を楯にする部分はある。結婚しているのだから、まさか浮気はしないだろう、思い切った行動にはでないだろう、と信じ込む。ジョセフとサラの結婚は見事、亀裂を生じる。ナイフはフランクだ。火のある所に煙が立ち、焼けぼっくいに火がついた。自暴自棄になる条件が満点にあったジョセフが最後の一歩を思いとどまったのに対し、フランクとサラはそれを簡単に超えた。どちらに分があるか、ははっきりしている。それは、法律的にも道徳的にもジョセフに利がある。映画としての結末は法律上の夫婦がなんとかこの困難を乗り越えるのではないか、と思わせるられるところでつけられているが、案外彼らは離婚して、フランク、サラの結びつきとなるかもしれないし、その方が実例としては多いだろう。
　それにしても、なんというモラルの低下よ、と嘆いたところで、こういう現実を変えることは出来ない。人間、自然の欲求に従うとしたら、こういうことになるしかないし、又、現実がそうだからと言って、これはまずいと思う。