この映画で何か良いところを探そうと無理に考えれば、ないことはない。主演のキアヌ・リーブスが案外さまになっていたこと、デニス・ホッパーにはこんな役がぴったりだと、あらためて思ったことだ。その他はとりたてて言うことがない。でも、それだと終わってしまうので、もうちょっと無理して考えよう。タイトルの背景がエレベーターの下がってゆくところで、その後に続くエレベーター爆破による脅迫へとつながってゆく場面なのだが、かんじんのタイトルの文字が、死んでいる。上から下に向けて進みつつある場面が、字が出ると止まってしまう。ＳＰＥＥＤの文字がびゅんと飛んでこなくちゃいけない。ソウル・バスに頼めばこんなことにはならなかったに違いない。冒頭からのていたらくがあとあとまで尾を引き、細部にいい加減な点が多々あり、それがいちいちひっかっかる。エレベーターでの脅迫に失敗した犯人が、自爆してしまったことになっていたが、死体を確認しないはずがないのに、どうしたのでしょう。別人の身代わりでも用意してあったのでしょうか。こういう映画だもの、主人公がスーパーマン化していても、文句は言うまい。でも、エレベーター、バス、地下鉄、と三つも次々に襲いかかる危機に、ことごとく生き延びるのには、驚いてしまった。いくら何でも、という感じ。これが例えば、007ならどんなことでもＯＫだろうけど、普通の警察官があんな大活躍をしてしまうのは、おかしすぎる。とはいえ、この映画は、大いに乗って楽しめばいいのではあるが、そういう疑問が次から次に湧いてきてしまう私でした。