アル・パチーノは見逃せないので見た。彼が死にゆく者に見えない、それは精力的な力強さが彼全体から輝きだしているからだ。だからこの役にはぴったりというわけではないが、それを彼のうまさでカバーしている。冒頭のタイトルの後ろは古今の映画が流れる、ということはこれはよくある映画好きの映画かな、と思ったが、そうでもなかった。パロマという新しい映画館に行きたいという子供が入場料の25セントと得ようとする一日を描いている。それが彼の祖父の最期の日と一致しているからドラマとなる。一見精力的ではあっても、心臓が悪いのでは仕方ない。彼の最後の望みを孫が叶えてあげる。それは彼の若かりし頃のあやまちの清算であった。わだかまりを
抱えたままで死にたくないものね。そうは普段考えていても日々の生活のあれこれで忘れているうちに、死が先に来てしまったりする。そう考えると彼は幸いな人だ。最大の懸念が晴れたのだから。アメリカの南部の夏のある一日を丹念に描いていて好感が持てる。時代色もよく出ていたし、少し出来すぎた話ではあったが、印象に残る映画だ。原題のTWO BITSはどういう意味だろう。