諜報員(Podvig Razvedchika)1947
監督 ボリス・バルネット 
出演 パーヴェル・カドチニコフ、P・アルザノフ

 ボリス・バルネットの二本目。きっちり山の吉兵衛さんが作ったような映画。画面はシャープだし、話はぴしっとしていて分かりやすい。だけど、このように国から依頼されたままというより、それ以上のものをかくも見事に作り上げてしまうのは、職人仕事の最たるもので、うまいというしかない。
 ただ、スパイとしての活動をちゃんと成し遂げることが、新婚の家庭を壊すようなことにつながらなければいいな、と思うが、仕事をきちんと出来る人だったら、家庭の維持も出来る人だろう。とこのようにこの映画ではいっているが、実際はどうだったろう。自国が最優先されるということは、相手国は敵国としてやっつける対象として、どんな手を使ってもやっつけなければならないのだから、そして、国家に絶対的な存在があるはずのない現状をみれば、この場合、ソ連の為に働けば働くほど敵国が不利になり、国の安寧を危うくすることになる。この時代で言えば、敵はドイツのナチだから良いようなものの、ドイツという国の社会状況としてのナチズムを潰すことは良しとしても、そこに暮らす人間をも結果的に抹殺してしまうようなことにつながりかねない活動を全面的に賛成するわけにはゆかない。戦争を喧嘩とみなして両成敗にするわけには行かない。だが、そのどちらか一方だけが悪者で、もう一方は正義だという図式にはならない。
 スパイというもの、沈着冷静に人を殺すこともあるし、それは立派な理由を背中に行なう行為であるのだから、疑問に思うこともないとは思うものの、その辺、どのように彼ないし、彼女の内部で考えているのだろう。まるっきり疑わないのかな。疑わしいな。

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