まず思ったことはずいぶん金がかかっている映画だな、ということで、全てがセット撮影のようだから、その一つ一つに半端ではない金がかかり、映像も凝りに凝ったものの連続で、おいおい、この前破産宣告をしたばかりじゃないの？コッポラさん、それともこうなりゃやけくそ、やるだけやってみよう、ってなことで、見事すさまじい映画を作り上げてしまったというわけか。
　映画って、画面のすみずみまで監督の息の掛かってないところはないものだろうが、この映画の気の使いようといったら、とてもじゃないが一人の仕事ではない。監督は全体の責任は負うが、フィルムの一コマ一コマの全てに目が行くはずがないと思う。それだけ、全ての面に行き届いた仕事を見ると、素晴らしいと思う。と同時に、エネルギーをこのようなものに注ぎ込むとはもったいないこと、とも思った。
　この映画は、ブラム・ストーカーのドラキュラと銘打っているところをみると、他のドラキュラもあるようで、でもこれは私の知っている話のようで、オーソドックスなものだった。三百年も前の呪いが生き続け、本人までもが出現し、面影のそっくりな女性に近づいてゆき、彼女の命を引き換えに自らの望みを叶えようとする。これは理不尽なことで、恨みを晴らす相手は別の時代の人ではないか。それにそういつまでも思いが世紀を超えて生き続けるなんて、後の時代の人からみると迷惑でしかない。こんな恨みつらみが幾重にも積み重なって、私達を食いものにするのだったら、たまったものじゃない。いい加減に諦められるように人間には寿命というものがあるのではないか。
　ウィノナ・ライダーは良い、ただやはり現代的なその容貌からみても、彼女の役ではなかったように思う。