東京日和(1997)
監督 竹中直人
出演 中山美穂、竹中直人、松たか子、三浦友和


 監督には冒険して欲しかった。この映画の題材がアラーキーであることは分かっていることだからこそ、例えば主人公をカメラマンでない人にするとか、妻への愛ではなく、動物への愛だったり、変化球で勝負するようなことをしてほしい。なぜなら、描く対象のはっきりしたものを正攻法に描くことは簡単そうであって、当人が生きていることでもあるし、けっこう難しいと思うからだ。視点を変えてみると、案外おもしろくなると思う。といって、この方法で面白かった映画をあげることは出来ないくらい珍しいことになってしまうが、それというのも、この映画があまりにも主人公を神格化しているように思えるからだ。特に、荒木さんという人を実際に知らないからこんなことを思うのかもしれないが、テレビなどで見る限り、映画のような繊細さの持ち主に見えないのだ。これは多分、彼を知らないから、失礼なことを言っているのかもしれないが、まあこの文章も彼に読まれる気遣いもないから、書いてしまう。率直に言えば、面白くない。妻の行動が異常というか、かわいいいたずらというのか、片時も目を離せない状況になっている。これは、彼女に対する愛情を途切れないようにするのが、辛くなるようなことじゃなかったか、と同情してしまう。私なんかに同情されたくもないだろうが、少なくとも私だったら、見放してしまっただろう。だけど、そうすると他に誰が、と考えるとそうはしないか。とにかく、大変な生活だっただろうと想像される。原作が写真集だとしたら、彼らの生活をどうやって、知ったのだろう。それとも、本の中に書かれているのか。
 それとも、ここに描かれたものは、創作が多く含まれているのか。それだったら、また別な感想になる。

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