007を見るのは随分久しぶりだ。ずっとずっと昔ショーン・コネリーのを何本か見た。その後、ロジャー・ムーアのを1本か2本。それ以来だから、どんな風になっているのかちょっと見たい気もあった。この手の映画は元来見ないのだが、これだけは別物と思っている。これが本家という気がするから、これだけは見てもいいかな、というくらいの気持ちだが、最近ではドンパチのすごいのが多くなって、もういい加減にしろ、と言いたい。その点、このイギリス映画はおとなしいし、上品だ。
　ショーン・コネリーが最高だったという評判には同感だ。だから、この役を新たにやる人は躊躇することだろう。彼を抜くことは難しいからだ。となると、彼とは別なボンドを作り出せばいいのであって、半ば成功して、半ば失敗しているくらいか。
　では、ピアーズ・ブロスナンはどうか。正当のイギリス人ではあるが、プレイボーイには見えない。女たらしのプレイボーイでなくても構わないが、ショーン・コネリーはそうだったし、どうしてもそういう印象が強いから、それにならわなくてはいけないような気がする。新しい人はそれなりのボンド像を作り上げればいいのだが、これがなかなか難しいようだ。
　東西冷戦がほぼなくなってしまった今、拮抗する勢力を何にするかは、困るところだ。今回はメディア王が電波の世界を支配しようとたくらむ話だ。したがって、国と国との話でもなく、個人の妄想をうち破るようなことなので、話がずいぶんと小さい。小さいものをいたずらに拡大しているものだから、粗が見えてくる。まあ、007を理屈っぽく語る必要はないのだけれど。少なくとも、見て、すっとしたとか、楽しめたとかはなかった。これで、当分見る必要はなくなった。